NHK「平清盛」はライトノベル大河ドラマになってしまうのだろうか

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NHKの来年の大河ドラマ「平清盛」は既に撮影が始まっているのだが、某所では、白河法皇や鳥羽上皇、後白河天皇といった皇統に連なる人々を、「王家」と表現しているのが不適切であるとして、賛否両論、議論が盛り上がっている(例えばここ魚拓ここ魚拓)。

筆者は、歴史はロマンがあって好きな方だが、小説と史実がごっちゃになっていて、何が歴史的に正しいかというのは容易に断じ得ない。
よって、平安時代に於いて皇室は「王家」と呼ばれていたのだと言われれば、「はぁ、そうですか」と応えるしかない。
しかしながら、「王家」という表現に激しく違和感があるのは否めない。

まだ放送されていないドラマのホームページなんてのは、めったなことで見ないのであるが、話題につられて覗いてみた。
そうした処、「王家」の表現よりも違和感を持ったものがある。

ここ魚拓の平清盛の解説部に次の表現がある。

人の心をつかむことに長(た)けた彼は、瀬戸内の海賊を束ね、
やがて武士の王となり、そして日本の覇者となる。

あくまでも筆者の歴史認識なのだが、我が国では、大和朝廷成立以降、当初「大王おおきみ」と呼ばれていた地位は、天智天皇の頃に「天皇」号に変化して現在に至るわけだが、皇統内部での帝位争奪の争いはあったものの、臣下があからさまに皇位簒奪を行ったという認識は無い。
古くは蘇我氏も藤原氏も平氏でさえも、皇統に対して自らの血縁者を嫁がせて外戚関係を強化し、実権を握ったわけだが、皇位に就いたものではない。
先に引用した表現からは、どうも、このドラマの制作に携っているチームは、単なる我が国の権力の頂点として「王位」というイメージを持っているように感じられる。清盛が「武士の王」なら、平家は「王家」なのだろうか。それではこのドラマは「王家」と「王家」の対立の物語なのだな。
そうであるならば、如何に弱体化した時期でも、形式上、頂点に君臨し続けてきた「天皇」の位、いわゆる皇位は、王位と表現するには違和感がある。
あえて言うなら、「王」とは戦国時代以降の「大名」と考えるのが適当ではあるまいか。

元々、皇帝というのは、諸王を統べるものとして、古代中国の始皇帝が初めて称した位である。
当然のことながら、皇帝は頂点だから、誰の指図も受けないのである。
我が国では、中国の「皇帝」に相当する位にある者を「皇尊すめらみこと/天皇」と号した。別に「みかど」とも尊称した。権力は奪おうとも、皇位は犯さざるものとされてきたからこそ、万世一系の皇統が続いてきたのだと思う。そんな視点で眺めると、外国の皇帝は単なる頂上権力者であるが、我が国の天皇位は似て非なるものと思われる。権力を奪われて指図されるがままの時代は、過去もあったし、現在もそうである。そうでありながら敬意をもって迎えられる存在、それが「天皇」なのだと思う。

清盛は帝を凌駕する権力を持つに到ったのだが、皇位に就いたものではない。
生涯、帝の臣下のままである。
朝廷に連なる者は誰もが実権を握ろうと争っていたのであるから、単純に清盛対法皇・上皇という構図にしてしまうと、薄っぺらな物語になってしまいそうである。
歴史ドラマの醍醐味は、史実の間隙をフィクションの感情の動きで埋めるからこそのリアル感だと思うのだが、どんな大河ドラマに仕上がるのだろうか。
どこかの国のドラマのような、ほとんどがフィクションの、時代劇風ドラマは御免こうむる。
時代考証の先生もこんなこと魚拓を言ってるので、怖いもの見たさというような、妙な気分でいる。


(8月30日追記)
某所では(NHKがどう考えるかは、さて置き)「王家」表記は避けて「天皇の一族」と表記するのが最も正確、かつ、無難だろうという事に収斂しつつある。
ドラマとなれば、現代用語と史実との折衷を図らないと、物語としての面白さが薄れるという面があるから、確かにこれは無難だと思う。
しかしこれは作品全体の一部分だろうから、他にどんなバクダンが潜んでいるのか、未だ部外者である一般視聴者には宣伝で垣間見る以外に知る術も無い。
こういうPRを違和感無くやってしまっている時点で、かなりNHKには失望している筆者である。

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このページは、山椒魚が2011年8月29日 20:26に書いたブログ記事です。

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